方向変更を上手に使う

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 この文書は本来、世の中の現状について解説するために公開しているものであり、 常に現状に追随することが期待されます。
 しかし実際には、最後の更新(ページ末尾に記載)から相当な年月が経過しており、 記載内容は現状に追随していません。 また、この文書を今後更新する予定はありません。
 したがって、この文書は本来の目的を達成していません。 最終更新当時の世の中の様子を伝えるという、 本来とは異なる目的で公開を続けているものです。
 以上の点を理解のうえ、お読みください。

[Summary] これは何?

注意

 実際に利用する前には使用上の注意をよく読んでください。 実行した結果について、SWA は何ら責任を負いません。


方向変更とは?

 ここでいう「方向変更」とは、「JRの乗車券を買い、それを使い始めてから、 手持ちの乗車券の末端の部分を別の方向に変更すること」です。 最終目標は「方向変更を利用した運賃の節約」ですが、 まずは方向変更について調べてみましょう。

発駅計算と打切計算

 通称「方向変更」は、区間変更(=乗車後の変更)の一種です。 区間変更をすると、一般的には変更の前後で差額が生じます。 その差額をどのように精算するか、大きく分けて2つの方法があります。

  1. 発駅計算:乗るつもりだった区間の運賃、 つまり手持ちの乗車券のねだんと、 実際に乗った区間の運賃を比較して、差額を払う。
  2. 打切計算:乗るつもりで乗らなくなった区間の運賃と、 新たに乗ることにした区間の運賃を比較して、差額を払う。

余っても戻らない

 いったん乗車券を使い始めたら、 かりに変更して過剰額が出ても払い戻しはありません。 これは2つの計算方法に共通です。
 いっぽう、乗車券を使い始める前に変更すると、 過剰額が出れば戻ってきます。

似ていても全然ちがう

 一見すると2つの計算方法は同じように見えますが、全然ちがいます。
 たとえば、東京から(京都経由で)奈良までの乗車券を買って、 実際には京都から(奈良に行かずに)神戸に向かったとします。 すると、計算方法は以下のようになります。

  1. 発駅計算:手元にある乗車券「東京→奈良」は8510円、 実際に必要な乗車券「東京→神戸」は9030円なので、9030−8510=520円を払う。
  2. 打切計算:乗らないことになった区間「京都→奈良」は690円、 新たに乗ることになった区間「京都→神戸」は1050円なので、 1050−690=360円を払う。

どっちが安い?

 この例では打切計算のほうが安くなりましたが、 つねに打切計算のほうが安いわけではありません。
 たとえば「東京→大阪」を「東京→奈良」に変更する場合、 発駅計算だと差額なしですが、打切計算だと差額150円が必要です。

計算方法は選択できない

 この2つの計算方法のどちらを使うか、 乗る側に選択の余地はありません
 前者の「発駅計算」が適用されるのは「手持ちの乗車券が100km以下のもののとき」、 および「手持ちの乗車券が大都市近郊区間をはみ出ないもので、 変更後も大都市近郊区間をはみ出ないとき」だけで、 その他の場合には後者の「打切計算」になります。 大ざっぱにいえば手持ちの乗車券が短距離なら発駅計算、 長距離なら打切計算ということです。
 前述の例では、「東京→奈良」が100kmを超え、 大都市近郊区間をはみ出しているので「打切計算」が正解です。

何のために使い分け?

 短距離で発駅計算、長距離で打切計算と2つを使い分けているのは、 計算をかんたんにするためです。 たとえば「稚内→東京」という乗車券で高崎に行ったとき、 発駅計算だと「稚内→高崎」の運賃を計算する必要が生じますが、 すぐには計算できないので打切計算にした、ということです。

「何かが起こる」のはどっち?

 2つの計算方法を比較して、「発駅計算はつまらないけど、 打切計算では何かが起こる」と感じられたでしょうか?  もしそうなら、このページで言いたいことの半分はすでに伝わっています。

 発駅計算では、最初に目的地まで買っても、乗ってから変更しても、 払う時機がちがうだけで、払う金額の合計は同じです。 たとえば、本来なら1500円の乗車券を買わなければならないところ、 別の方向への1000円の乗車券を買って乗ったら、1500−1000=500円を支払う。 それが発駅計算でした。最初にちゃんと買っても、乗ってから変更しても、 結局は合計で1500円を払うことになります(もちろん、 必要以上に買ったら話は別です)。
 しかし打切計算はちがいます。 「使わなくなる区間の運賃」「新たに使う区間の運賃」という、 方向変更をしなければ出てこない運賃を使って差額を計算するのです。 とすると、最初から目的地まで買ったのと結果がちがう、 すなわち方向変更をすると運賃が安くつく、 あるいは高くつくということがあり得ます。

 前置きが長くなりましたが、 このページでは「打切計算となる方向変更を活用して運賃を節約する」ことを考えます。

乗り越しも同様

 いわゆる「乗り越し」も区間変更の一種ですが、 この乗り越しに関しても、「発駅計算」「打切計算」について同じことがいえます。 すなわち、発駅計算では最初から目的地まで買うのと同結果ですが、 打切計算では最初から目的地まで買うより高くなったり安くなったりします。


方向変更で安くなる例

熱海・大府・名古屋・東成岩の位置関係

 たとえば、熱海から名古屋まで行く場合に活用できる例を見てみましょう。
 熱海から東成岩(武豊線)までの乗車券を買うと、ねだんは4310円です。 この乗車券で改札を通ってから、 途中で「やっぱり名古屋に行きたい」と申告したとします。
 この手続きは、乗車券の末端を別の方向に変えるので「方向変更」にあたります。 また、もとの乗車券は100kmを超えるものなので、 計算方法は「打切計算」になります。
 打切計算では「乗らない区間」と「新たに乗る区間」の差額を払えばいいので、 この場合、 支払うべき差額は「大府→名古屋の運賃」マイナス「大府→東成岩の運賃」です。 計算してみるとどちらも320円なので、差額はゼロ。 つまり、最初に買った「熱海→東成岩」という乗車券は、 お金を払わずに「熱海→名古屋」という乗車券に変更できます
 ところが、最初に熱海から名古屋までの乗車券を買うと、いくらだと思いますか?  実は4620円、つまり、名古屋まで買うと東成岩まで買うより高いのです。 4620−4310=310円が方向変更で浮いたことになります。

運賃は一気に上がる

 このような現象が起きるのは、主にJRの運賃が階段状に上がることによります。

 タクシーに乗ると、料金は1円ずつ連続して上がっていくのではなく、 ときどき一気に数十円ずつ上がりますよね。 メーターが上がるぎりぎり手前で降りるのと、上がった直後に降りるのでは、 同じ料金でも乗れる距離がだいぶちがいます。
 JRの運賃もこれと同じで、1m進むごとに上がるのではなく、 何kmか進むまでは一定で、何kmか進んだところで一気に上がります
 運賃の上がる間隔は距離が長くなるにつれて広くなり、 600kmを超えると実に40km間隔です。 つまり、同じ運賃で乗れる距離には最大で40km近くの差が出てきます。

仕切り直しで同額に

 熱海から名古屋までは261.4km。この距離だと運賃は20kmおきに上がるので、 220km、240km、260kmと運賃が上がって、 上がったとたんに名古屋に着いてしまうわけです。 いっぽう熱海から東成岩までは運賃計算キロが259.8kmで、 こちらは逆に、ぎりぎり運賃が上がる直前で降りることになります。 なんだか名古屋に行く人が損をした気分ですよね。
 しかし、スタート地点が変われば結果も変わります。 現に、「大府→東成岩」「大府→名古屋」はどちらも320円でした。 東成岩より名古屋のほうが遠いので、 今度は名古屋に行く人のほうが(同じねだんで長く乗れるので)得をしています。
 なぜ東成岩まで買って変更すると安いのか、その理由はここにあります。 熱海から測ると「東成岩まではお得、名古屋まで行ってしまうと損」なのですが、 大府から測れば立場は逆になる、という事実を活用しているのです。 一般的にいえば、区間変更は、 実際の乗車駅以外からもう一度運賃計算を始めるための手段だといえます。


使用上の注意

 このページで紹介した手法は、いわゆる不正乗車ではありません。 しかし「怪しい乗車」ではありますし、約款起草者の意図からは外れています。 また、変更を前提とした契約を結ぶわけですから、 それに起因するある程度のリスクも負います。
 机上のお遊びで済ませるならともかく、実行に移すのであれば、 以下に述べるような点に十分留意してください。

真の意図は…

 このページは、ともすれば結果だけが一人歩きしがちな運賃の節約手法について、 正しい知識を持ってもらうことを目的にしています。 必ずしも実行をすすめるものではありません。

契約変更は「要承諾」

 区間変更は、 すでに結んだ運送契約(最初に買った乗車券)を変更する手続きにあたります。 この「契約変更」について、約款には「あらかじめ係員に申し出て、 その承諾を受け」ることが必要と書かれています。 契約の変更は無条件で認められるものではありません。

事故時の扱い

 改札を入ってから乗車券を変更するまでの間に事故が起こり、 ほかの路線または交通機関で振替輸送ということになった場合、 振替輸送は手元にある乗車券の着駅までしか受けられません。
 たとえば「東京→京都経由→奈良」という乗車券を買っておいて、 乗車後に「京都→奈良」の部分を「京都→大阪」に変更するつもりだった場合、 何かの拍子に京都・大阪間が不通になってしまったら、 京都から大阪までの振替輸送は受けられません。 その時点で「実は大阪に行きたかった」と言っても、 開通するまでは変更を受け付けてくれないのがふつうです。

不通区間は買えない

 事故などで不通の区間ができてしまったら、 その区間の乗車券は開通まで売れない、という取扱いが一般的です。 振替輸送はあくまで「乗車券を買ってしまった人」、 つまり「すでに契約してしまった人」への補償なのです。

誤扱いの可能性

 最後に、実はこれが一番遭遇する確率の高いトラブルだと思いますが、 誤った取扱いを受ける可能性があることを覚悟しなければなりません。 というのは、単純な「乗り越し」にくらべて「方向変更」の件数は圧倒的に少なく、 それゆえ、 計算方法を正しく理解していない係員が(残念ながら)相当数いるからです。
 このページで紹介した手法では、 地元の人しか知らないような駅までの乗車券を、 まったくちがう方向に延々100km以上も方向変更することが珍しくありません。 これに学割でも加わろうものなら、かなりの難題になります。

どこまで主張するか

 「約款に書かれた扱いが受けられるのは当然、 裁判を起こしてでも完遂する」という主張はもっともなのですが、 SWA はこういう「制度の目的外使用」に関して、 ある程度は利用者側が譲歩すべきだと思っています。



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最終更新: 2002年 5月18日
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